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切断刃及びフィルムロール収納容器

公開番号:特開2016-137913
公開日:2016.8.4
出願人:旭化成株式会社

 我が家では食品を保管等するときや電子レンジにかけるときのラップは「サランラップ」か「クレラップ」を買うことが多いのですが、先日サランラップを買って、ふと、『あれ?なんか変わったかな』と感じたので、早速製造元である旭化成のウェブサイトをみてみました。
http://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/saranwrap/

 すると、どうやらパッケージの握った感じを変えたそうで、2mmほど細くなったようですね。断面の縦横ともに2mmずつ小さくしたとのことですから、認知できる程度の違いが発生していたということでしょうね。

 それと、箱についているカッター刃の形状をM字型に変えたそうです。M字型とすることで、切るときにかかる力が少なくて済むとか。

 なるほど、パッケージを細身にしたくらいではダメでしょうが、カッターの形状を変更したとなると、特許のニオイがしてきました。

 早速調べてみますと、やっぱり出願されていましたね。このブログを書いている時点での審査状況は、最初の拒絶理由通知がされて(拒絶理由は『進歩性なし』)、それに対する意見書が提出されているという状況です。補正なしで審査官と全面戦争ってことですね。むむむ、これはアツイ!

 

【課題】フィルムロール収納容器に設けられる切断刃の十分なカット性を実現しつつ、ユーザを怪我させない十分な安全性を確保する。

 なるほど、カット性と安全性の両立が課題ってことですね。ちょっと見てみます。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
 フィルムロール収納容器の長手方向に沿って長尺状に設けられ、前記フィルムロール収納容器のフィルムロールから引き出されたフィルムを切断するための切断刃であって、
長手方向の中央部に、前記引き出されたフィルムに相対する方向に突出する凸部を有し、
前記凸部は、先端側に平坦な直線部を有する略台形形状を有し、
前記直線部の長さが、切断刃の長手方向における長さの1%以上5%以下であり、
前記直線部の両端における変動角度が、7度以下である、切断刃。

【請求項2】
長手方向の両端部に、前記引き出されたフィルムと相対する方向に突出する凸部を有する、請求項1に記載の切断刃。

【請求項3】
請求項1又は2に記載の切断刃を有する、フィルムロール収納容器。

https://astamuse.com/ja/drawing/JP/2016/137/913/A/000002.png


 請求項の記載はいたってシンプルですね。「略」って言葉は便利ですが、これを数値範囲とかにつけると審査官からは秒速で「発明の範囲が不明確」という通知が飛んでくるわけです(審査基準にも載ってます)。
 今回は「だいたい台形」って意味にしかとれませんから、いいんじゃないでしょうか。

 請求項の記載だけみると、「変動角度」って何だろうと思いましたので、明細書に定義があるかどうか、明細書をみてみますと、【0021】と図4に説明がありました。これなら明確性はクリアできそうですね。

 出願経過をみてみますと、拒絶理由通知がされていて、拒絶理由は進歩性違反のみとされています。

 拒絶理由の内容をざっくりいうと、主引例として以下の2つを提示して、ここに示されている刃の形をM字に変形するのは当業者が適宜決定しうる設計的事項にすぎない、ということで当業者にとって容易、という判断のようです。

 

主引例1)特開平05-246426号公報
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H05246426/AE610761A293AD45C0280DCC393900BE

主引例2)特開2006-298408号公報
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H18298408/D56E3907DF6BF0C83FBE14C36CB2C75C

 

 審査においては、ただ形を変化させただけ、という認定で「設計的事項」という判断ですかね。

 で、進歩性違反に対する意見書での反論は、発明の構成に至らないという真っ向勝負の反論のほかに、有利な効果について主張することができて、実はこれが結構有効です。

特許・実用新案審査基準
3.2.1(2)より抜粋
・・・審査官は、意見書等で主張、立証がなされた効果が明細書に記載されておらず、かつ、明細書又は図面の記載から当業者が推論できない場合は、その効果を参酌すべきでない。

 提出された意見書をみてみますと、やはり有利な効果について主張して、補正なしで戦いを挑んでいます。簡単にいえば、本願は安全性についての課題と解決手段があるのに対して、引用例には安全性については考慮されていないだろ、ということを主張しています。

 安全面は、「当業者にとって自明の課題」とも思えますが、確かに安全性に関する記載は引例にはなさそうです。これはなかなかいい主張と思えます。

 

 さてこの主張を審査官はどう考えるか、今後に期待して引き続きヲチしてみたいと思います。


https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H28137913/DB016864770F825B242F027E4E76286C

 

 

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