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CERN内ウラシマ効果利用縮小LHC弱過去強未来ワームホールタイムマシン

出願番号:特開2018-50474
公開日:2018.3.29
出願人:加治佐  功

 いやー、ついにタイムマシンきちゃいましたね。分類不能案件。
 タイムマシンに関して、この出願人は繰り返し出願していまして(特開2012-196141)、よっぽど日経サイエンスのSF特集が好きなんだなあ、という印象。

 今回はPHP研究所が出版している「タイムマシンがみるみるわかる本愛蔵版」を元ネタにして出願したようです。審査請求→拒絶理由通知→意見書提出→上申書提出→拒絶査定という、この手の出願にしてはかなり頑張った審査経過をたどっております。ちょっとみてみます。

 
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
  (ィ)LHCで光に限りなく近い速さまで加速した陽子と陽子を正面衝突させる。
  (ロ)すると膨大な量のエネルギーが発生してブラックホールが出来るからワームホールも出来る。
  (ハ)このエネルギーが弱いとワームホールは過去へ開く、強いと未来へ開く。
  (二)このLHCワームホールを連続して作りそれに陽子と陽子も連続衝突させ揺らしウラシマ効果(リップバン効果)で大過去大未来行きも可能で超巨大なので脳しわ、小腸、渦巻き型に改良して縮小型とする。
  (ホ)この揺すり方のウラシマ効果という改良によって大未来大過去へのワームホールタイムマシンが狭い所でもコストを下げて量産出来る。
    以上の如く特徴から成るCERN内ウラシマ効果利用縮小LHC弱過去強未来ワームホールタイムマシン。

 

 請求項は1つですが、さっぱり何言ってるかわからないですねwww

 出願にあたって、早期審査を請求しています。また、出願と同時に出願公開請求をしています。

 審査官は、大変にまじめな方なのか、きちっと審査されており、以下のような拒絶理由通知を出されました。


1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

                  記

●理由1(実施可能要件)及び●理由2(明確性)について

・請求項1

(中略)

 本願請求項1に係る発明の特に以下の点について、発明の詳細な説明には、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、またその意味するところが明確でない。

(1)ブラックホール及びワームホールが出来るほどの膨大な量のエネルギーが発生するようなLHCをどのように構成するのか。
(2)どのような手段によって「このLHCワームホールを連続して作りそれに陽子と陽子も連続衝突させ」るのか。
(3)「揺らしウラシマ効果」とは、どのようなものか。どのようにして「揺らしウラシマ効果(リップバン効果)で大過去大未来行きも可能」とするのか。
(4)「脳しわ、小腸、渦巻き型に改良」とはどのようなことを意味しているのか。どのような手段によって「脳しわ、小腸、渦巻き型に改良」するのか。
(5)仮に「LHCで光に限りなく近い速さまで加速した陽子と陽子を正面衝突させる」ことによって、「ワームホールも出来る」とすると、そのワームホールをどのようにして「ワームホールタイムマシン」として利用可能なものとするのか。

 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
 また、請求項1に係る発明は明確でない。

 なお、この出願は、出願内容が著しく不明確であるから、請求項1に係る発明について、新規性、進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。


、、、まったくおっしゃる通りですね。

 これに対して出願人は、以下のような意見書(上申書も同様の内容)を提出してきました。改行もなしに。
 なんというか、小さいころからまじめに勉強するって大事なことだな、という第一印象です。

【意見の内容】
審査官殿の指摘のうち第一の発明として不明確とありますが非特許文献1と2の「タイムマシンがみるみるわかる本愛蔵版」2008年6月9日8頁から11頁と「日経サイエンス」2009年3月号92頁から107頁を参考文献として明記しておりこの写しとによって明確になると解されます。またどのように縮小するかは非特許文献2の写真や絵のように円形だけでなく渦巻型等にすることで出願当時の技術の周知技術となっていたことを証明します。またどのようにしてLHCを利用してタイムマシンを作るかは非特許文献1で光に限りなく近い速さまで加速した陽子と陽子を正面衝突させブラックホールができるからワームホールもできてそれがタイムトンネルとなります。さらにLHCの構成も非特許文献2に詳しいし連続衝突は陽子を連続して照射することで可能。揺らしウラシマ効果は2017年11月5日「NHKサイエンスゼロ タイムマシン」の録画BD-Rで解決。さらにBD―Rを詳しく解説すると大未来にはワームホール光速で揺すると時間が7分の1づつ遅れそこにいれば時間が遅れそこから出れば大未来にも行ける。大過去にはこの光速で揺すりウラシマ効果ワームホールをくぐればいける。渦巻型についても非特許文献2の写真等で当業者が容易に設計を渦巻型に変更可能と解される。ワームホールタイムマシンの利用可能は非特許文献1やBD―Rや非特許文献3で証明しています。また非特許文献3でワームホールタイムマシンの主張を数式で証明しており真理になっており科学の反復可能性もある。なお主要なところはこれらの写しとBD-Rを添付します。この周知技術により当業者が発明として実施できる程度に至ったと解されます。またこれらの文献によって審査官殿の解釈も解決すると解されます。従って自然法則を利用していると解されそのことは明細書や写しをもとに特許要件審査を行え得ると解されます。この結果から従来のものに比べて格段優れた作用効果を奏するに至ったことは当業者といえども容易に想到し得るものではないと考える次第である。よってなにとぞ本願発明は特許すべきものであるとの査定を賜りますようお願い申し上げます。

 録画BD-Rで解決wwwww
 そしてどうやらこのBD-Rは特許庁で再生できなかったのか、他の手段で提出しなさい、との応対記録も残っています。

 

 そして、結局、拒絶査定。

 

 拒絶査定の起案も審査官のまじめな人柄をうかがわせるような丁寧な記載です。以下一部コピペです。


・・・平成30年5月27日付け意見書、平成30年8月18日付け上申書においても同様の旨が主張されている。

 しかしながら、上記の意見書における主張、非特許文献1と2の「タイムマシンがみるみるわかる本愛蔵版」2008年6月9日8頁から11頁と「日経サイエンス」2009年3月号92頁から107頁を参酌しても依然として、本願請求項1に係る発明の特に以下の点について、発明の詳細な説明には、当業者が実施できる程度に明確か
つ十分に記載されているとはいえず、またその意味するところが明確でない。

(1)ブラックホール及びワームホールが出来るほどの膨大な量のエネルギーが発生するようなLHCをどのように構成するのか。非特許文献1の90頁に記載のように、ワームホールは理論上の存在にすぎず、その存在は確かめられていない。

(2)どのような手段によって「このLHCワームホールを連続して作りそれに陽子と陽子も連続衝突させ」るのか。

(3)「揺らしウラシマ効果」とは、どのようなものか。どのようにして「揺らしウラシマ効果(リップバン効果)で大過去大未来行きも可能」とするのか。
 仮に、「揺らしウラシマ効果」が、非特許文献1の99頁に記載のワームホールの「口Bだけを光とほぼ同じ速さで引っ張って宇宙の彼方へ遠ざけます。そして再び光とほぼ同じ速さで引っ張って元の場所に戻します。」との事項、及び2017年11月5日「NHKサイエンスゼロ タイムマシン」のキップ・ソーン博士の同様の説を意味するものとしても、2017年11月5日「NHKサイエンスゼロ タイムマシン」の解説の通り、ワームホールの一方の口を光とほぼ同じ速さで移動させる方法が不明である。

(4)「脳しわ、小腸、渦巻き型に改良」とはどのようなことを意味しているのか。どのような手段によって「脳しわ、小腸、渦巻き型に改良」するのか。
 出願人は、意見書及び上申書において「またどのように縮小するかは非特許文献2の写真や絵のように円形だけでなく渦巻型等にすることで出願当時の技術の周知技術となっていたことを証明します。」と主張するが、非特許文献2の写真や絵を参照しても、「渦巻型」とは、何をどのように構成することを意味してい
るのか理解することができない。また、「脳しわ、小腸」型に改良することの意味するところも理解することができない。

(5)仮に「LHCで光に限りなく近い速さまで加速した陽子と陽子を正面衝突させる」ことによって、「ワームホールも出来る」とすると、そのワームホールをどのようにして「ワームホールタイムマシン」として利用可能なものとするのか明らかでない。

 出願人の主張のとおり、「光に限りなく近い速さまで加速した陽子と陽子を正面衝突させブラックホールができるからワームホールもできてそれがタイムトンネルとな」るとしても、発明の詳細な説明や明細書で引用されている非特許文献1-3及び2017年11月5日「NHKサイエンスゼロ タイムマシン」には
、そのタイムトンネルを実用可能なものとするための手段が示されているとはいえない。

 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
 また、請求項1に係る発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


 まさに完璧な拒絶と感じます。感動しました。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H30050474/CD191AB996E891A9C443E61D532DDE91

 

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